芸人の若手のころの経験をもとにしたという名目のホラー映画、作品は3つの視点から成り立っており、主役が登場する3人の男は全員俳優ではなく中堅の芸人が主役を演じている。
1人目はニューヨークの屋敷裕政
2人目はかが屋の賀屋壮也
3人目はトム・ブラウンのみちお
芸人に演技を必要以上に求めるのは間違ってはいる気がするが、芸人が俳優をやっているので表現方法の差があるのか映像からは違和感が延々と感じてしまう。この辺は偏見と見慣れていないことの違和感が原因で芸人で俳優として成功している人がそれなりにいるように映画に合わせた演技ができたのかもしれないが三連続も個性豊かな芸人が出てきてホラー体験をするという演出がよりコント側によって行ったのかもしれないというフォローしておきたい。
映画のための演技を頑張ってやっているニューヨークの屋敷裕政は演技が上手いかどうかは置いておいてもそれなりに俳優として頑張っている感じはあるのだが、2人目のかが屋の賀屋壮也は演技とコントの半々の印象があり、3人目のトム・ブラウンのみちおになると周りの俳優が演技をやっている中でコントの演技をやっている。
主人公が1人目2人目3人目と変わるごとにホラーの映画を作る気があるのか意識が監督にあったのか疑問を感じてしまう演技をしだしている。ホラー映画の苦手な人にはそれなりに怖さを楽しむことのできる映画なのかもしれないが、ホラー映画を数本見たことがある人たちにはこの内容で怖がるのは1人目までで、2人目以降はホラーとしての展開は強くなっていくのに主役の芸人の演技がコントの雰囲気が強くなっていくので怖さよりも笑いの感情が引き出されるかもしれない。
これが3人の芸人のためのタイアップ作品なら十分に納得できる作りになっているので、お笑いが好きな人には逆にウケるかもしれない。そう考えると3人の主人公が切り替わるごとにコント感のある演技をしているのにも納得する部分がある。
『劇場版 ほんとうにあった怖い話〜事故物件芸人〜』予告
【原題】劇場版 ほんとうにあった怖い話~事故物件芸人~
【監督】天野裕充
【脚本】天野裕充
【俳優】
ニューヨーク(屋敷裕政、嶋佐和也)
前島亜美
かが屋(賀屋壮也)
トム・ブラウン(みちお、布川ひろき)
【公開】2021年
【時間】75分
【国】日本
【ジャンル】ホラー
【点数】2
5 … 人に紹介できる面白さが解る映画
4 … 感性の違いはあるかもしれないが面白い映画
3 … 時間の無駄とは感じなかった映画
2 … 最後まで見ることができないこともある映画
1 … 紹介してきた人を殴りたくな
ホラー映画としては話が進むごとに微妙になっていくけれども3組の芸人が好きな人たちにとっては彼らの個性が出ているのでファンとしてはうれしい作品なのかもしれない。芸人やアイドルのファン向けの映画はこれからも増えていくのかが気になるところ。
◆1人目はニューヨークの屋敷
1人目は企画で事故物件に住むという話を受けて鍵をもらい、その部屋に住み。経過報告のための動画を撮影するのだが、1日目から不穏なことが起き、二日目にしてカメラには映るけど人の目には映らない人形とワンピースを着た中年の女性が現れ襲われる。
無我夢中で恋人と会う約束をしていた店へと駆け込むが女性からは心霊映像を取ったカメラを取りに行けと言われて家に帰ると相方が押し入れに隠れていて、話を聞くとストーカーのように部屋を盗聴していて、逃げていった芸人の後にアパートに忍びこもうとすると扉が開き、入ってみるとこの世のものとは思えない女が睨んでいたという、とりあえず相方を帰らせてスマホのカメラを確認すると動画は残っておらず、彼女は見間違えだったとしてかたずけるのだが、押し入れからは女がこちらを見ているという展開。
作品として怖さをどう表現するという意識が足りていない脚本と演出、駆け出しの芸人が動画を撮影しているときに何のボケもなく淡々と喋って鍵がかってしまったという少し前に起きた心霊現象や不動産やのおかしな挙動、隣の人のドアをちらっと開けてこちらを覗いたことなど、話のネタとしては事欠かない出来事があってそれを一切話として取り上げない。
設定として駆け出し時代の話ということで登場しているならその後、成功した芸人なのだろうからその辺の芸人としてのうまさが演出されないのが違和感として残る。怖い話の映画だから怖さに焦点を当てればいいという甘い考えの脚本と、演出もこれが怖いでしょと言いたげな演出が開始から延々と続く。
◆2人目はかが屋の加屋
2人目はその二年後という設定で同じアパートに上京したての芸人が二人で住む。部屋を借りた日からあった人形を捨てたつもりが何度も部屋に帰ってくる。その呪われた人形をどうにか処分しようと神社に引き取ってもらい景気づけに酒を飲もうと部屋に帰って電気をつけるとそこにはやはり人形があり、バスルームから血だらけの女の手が伸び気を失う。
相方に起こされると布団の中にいててっきり夢かと思いきや、相方はあの人形に名前を付けて大事そうにしているのだった。その後、引っ越すと何事もない生活がつづき、相方と芸人を続けている。
血だらけの女の手に捕まれる加屋の表情はかなりひどいので演技指導はなかったのかと問いたくはなる。
ほかのテレビ番組のかが屋が主役としてのホラードラマではもっとうまい演技ができていたので監督の演技プランに問題があると思われる。
◆3人目はトム・ブラウンのみちお
3人目もまたその2年後という展開、相方に愛想をつかされて、同性をしていた恋人にも見放されてあのアパートを借りて生活することになり、芸人としての自信もなくうなだれながら酒を飲んでいると同じく落ち込んだ状態でビールを頼む長髪の男(トム・ブラウンの布川)と部屋で酒を飲みながら長髪の男が落ち込んだ理由を一通り聞いて、自分が芸人であることを知ると芸を見たいと言われて芸を見せるが、愛想笑いをされその対応に不満を感じ問い詰めついには殺してしまうという強行にでてしまう。
その後、繰り返される殺人を相方と恋人が部屋を訪ねてきたことで暴かれ、アパートに取りついている霊が原因であるという結末を迎える。
トム・ブラウンの演技としてうなだれていたり、肩を落として猫背になっている演技はいいなと思うのだが、しゃべりだすと途端にコントの演技になってしまい、ホラーというよりも笑いをこれからやるんだというような微妙なオーバーリアクションなのでただでさえ怖さを感じないのに一気に笑いの方向へと持っていかれ、その後の演技はホラーコントのような演技でこれを怖がるのはなかなかに難しい。
3人目の時はバックミュージックとして三味線と鐘の音が流れているのは目新しくてみちおの風貌も相まってホラーの演出としての雰囲気は最初は出ていたのにトム・ブラウンをコンビで出したところで完全に笑いの方向へかじを切ってしまって残念に思う。