『劇場版  東京伝説 歪んだ異形都市』レビュー:狂気と奇妙さの5つの物語

『東京伝説 歪んだ異形都市』は、平山夢明さんの原作「東京伝説」を基にした実写ホラーオムニバスの第2弾。5つの短編からなる本作は、東京を舞台にした都市伝説をテーマにしているが、タイトルに「東京」とあるものの、第1話「ぬいぐるみ」以外は地方都市でも起こりそうな物語が多く、タイトルとのギャップを感じる部分も。しかし、都市伝説らしい不気味さや奇妙さを軸に、狂気的な人間の恐怖を描く作品として独特の魅力がある。

原作を読んだ人ならその雰囲気を想像しやすいかもしれないが、映像化では原作の空気感が薄れている印象。前作で映像化しやすいエピソードを使い切った可能性もあり、本作は幽霊的な怖さよりも、異常な人間の行動や心理に焦点を当てた物語が中心だ。そのため、ホラーとしてはやや肩透かし感があるかもしれないが、結末の不思議さや考察の余地を残す作りが特徴的。ストーリー一つ一つが短いため、伏線や深掘りが少なく、気軽に「ながら見」するのに適した作品と言える。

全5話のうち、特に最後の「ホテル」が印象的だが、なぜこの話を最後に持ってきたのか、幽霊的な怖さではない展開に物足りなさを感じる人もいるかもしれない。それでも、狂気的な人間を描くホラーとして見ると、話の順序や構成には納得感がある。

【監督】千葉誠治
【脚本】千葉誠治
【原作】平山夢明
【配給】アットエンタテインメント

【俳優】
黒川芽以、中島愛里、小野川晶
堤千穂、秋山多奈、戸谷公人、廣瀬裕一郎

【公開】2014年
【時間】69分
【国】日本

【点数】2
時代というか、時世に合わせた話題を映画化した感じの作品なので、10年とかしたら懐かしい話題として見ることになるのかなという印象もある。

5 … 人に紹介できる面白さが解る映画
4 … 感性の違いはあるかもしれないが面白い映画
3 … 時間の無駄とは感じなかった映画
2 … 最後まで見ることができないこともある映画
1 … 紹介してきた人を殴りたくな

各話のストーリーと感想(※ネタバレあり)

以下、各話の概要と感想を紹介します。ネタバレを含むため、未視聴の方はご注意ください。

第1話『ぬいぐるみ』

ストーリー

捨てたはずのぬいぐるみが何度も戻ってくる。ゴミとして捨てても、なぜか実家の住所から配送され、現在の家に届く。ついには彼氏がぬいぐるみを捨てに行くが、帰ってこず、配達員が再び荷物を持ってくる。

感想

ストーカー的な不気味さが際立つエピソード。ぬいぐるみを拾って送りつける謎の行動や、彼氏が戻らない展開は、犯人に殺されたのか、ぬいぐるみに操られているのか、さまざまな想像を掻き立てる。現代なら完全に警察沙汰だが、ホラーらしい「説明されない恐怖」が効果的。

第2話『野外』

ストーリー

深夜の山林を走るカップルが、トイレのために車を止める。女性が野外で用を足していると、農機具のフォークを持った男が現れる。

感想

分かりやすいサスペンスホラー。車のライトが男を照らしたことで、犯罪を企んでいた男が「見られた」と誤解し襲いかかる展開は、考察の余地があり納得感がある。シンプルだが緊張感のある一幕。

第3話『素振り』

ストーリー

ストレス解消のためバッティングセンターで汗を流した後、深夜にバットを振る音で目覚める。音のする方向を見ると、男がバットを振り続け、気づけば数時間経過。最後は試合の音が聞こえる。

感想

夢か現実か判然としない奇妙な話。隣の部屋で延々とバットを振る男の描写は不気味だが、結末が曖昧で彼女の妄想なのか何なのか分からない。考察の余地が少ない分、印象が薄いかもしれない。

第4話『廃墟』

ストーリー

ドライブ中、友人の一人が行きたいと言っていた場所が廃墟だった。探索中に怖くなり帰ろうとするが、変な写真が撮れていることに気づく。2人が廃墟に戻り、戻らないため探しに行くが、そこは過去に殺人事件が起きた場所で、犯人はまだ捕まっていない。

感想

廃墟の雰囲気作りは秀逸。室外機の切れた配線や詰まった雨どいなど、細かなディテールがリアリティを高める。カメラが不自然に揺れる演出は、3人以外の「誰か」の視点を匂わせ、ホラーらしい緊張感を演出。分かりやすい展開の中で、この演出が光る。

気になった点
  • 室外機の配線だけが残る描写は廃墟らしさを強調。
  • カメラの揺れは固定撮影でないことを示し、第三者の視点であることを効果的に表現している。

第5話『ホテル』

ストーリー

車いすの男性を助けてホテルまで運ぶが、部屋に閉じ込められ、ハンマーで脅されながらアンケートに答えるよう強要される。質問は次第に暴力的になり、武器を変えてさらにアンケートが続く。

感想

異常な人間の恐怖を描く本作のテーマを象徴する話。ハンマーで脅される異常な状況は確かに怖いが、最終話としてはやや物足りない印象。ただし、狂気的な人間を描くホラーとして、話の順序は適切だったかもしれない。

 

総評

『東京伝説 歪んだ異形都市』は、都市伝説をモチーフにしつつ、幽霊よりも人間の狂気を描くホラーオムニバス。深く考察するタイプの作品ではないが、気軽に楽しむには十分な不気味さと奇妙さがある。特に「ぬいぐるみ」や「廃墟」の演出は効果的で、ホラー初心者にもおすすめ。肩の力を抜いて、都市伝説の怪奇な世界に浸りたいときにぴったりの作品だ。