『貞子3D』について調べると「ひどい」という感想がかなり出てきます。

いや、さすがに『リング』シリーズの流れをくむ作品なのだから、そこまでひどいことはないだろうと思って見てみたのですが、途中からホラー映画を見ているはずなのに「これはコメディかアクション映画の間違いではないのか」と問いただしたくなってきました。

まったく面白くない作品というわけではありません。ただ、『リング』の貞子を期待して見るとかなり違う。怖いというより驚かせる場面が多く、最後には貞子と物理的に戦い始めるので、ホラーとして見るよりもアクション映画として見た方が楽しめるのではないだろうかと思える作品でした。

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『貞子3D』はなぜひどいと感じたのか

まず気になったのが、ホラー映画なのに怖さがなかなか続かないことでした。

主要な役者は普通に見られるのですが、周囲の人物になると演技の差が気になる場面があります。鮎川茜の学生時代を知る人物が恐怖を感じている場面でも、表情からはそれほど怖がっているように見えず、こちらも一緒に怖がるというより演技の方が気になってしまいました。

刑事を演じる田山涼成についても、演技が悪いというより、この作品のホラーとは少し違う方向に見えます。サスペンスドラマを見ているような雰囲気が強く、せっかく怖い場面へ向かっていたのに空気が変わってしまうことがありました。

ホラー映画は何かが出てくれば怖いわけではなく、その前の「何か起こりそう」という時間がかなり重要だと思います。その雰囲気が途切れてしまうので、怖がる前に映画の作りの方が気になってしまいました。

「呪いの動画」の設定がよく分からない

『貞子3D』では「見ると死ぬ呪いの動画」が物語の中心になっています。

ところが見ているうちに、この設定もだんだんよく分からなくなってきます。

最初のうちは呪いの動画を見た人物が自殺したように見える形で死んでいくのですが、その後になると北山理沙や主人公に対して貞子が直接攻撃するようになり、画面から髪の毛まで飛び出してきます。

しかも本人が呪いの動画を探して再生したわけでもないのに、パソコンなどから勝手に貞子が現れる。

そうなってくると「見ると死ぬ動画」という設定は何だったのだろうかと思えてきます。

『リング』では呪いのビデオを見てしまい、一週間後に死ぬという時間があることで、その一週間の間に何が起きるのか分からない怖さがありました。『貞子3D』では動画を見ればすぐに危険が迫ってくるので、同じ貞子でも恐怖の作り方がかなり違います。

もちろん『リング』と同じ設定にしなければならないわけではありません。ただ、「見ると死ぬ動画」を新しい呪いとして出したのなら、その設定そのものをもう少し怖さにつなげてもよかったのではないだろうか。

貞子が物理攻撃を始める

さらに違和感が大きくなったのが、貞子が普通に物理攻撃をしてくるところです。

髪の毛で人を襲い、目の前まで現れて追いかけてくる。ここまでならホラー映画でもまだ分かるのですが、それに対して鮎川茜が鉄パイプなどを使って反撃し、貞子を何体も倒してしまいます。

ホラー映画を見ていたはずなのに、主人公が鉄パイプを持って貞子と戦っている。

このあたりまで来ると、さすがに自分の中ではホラー映画ではなくアクション映画になってしまいました。

『リング』の貞子は、そもそもどうやって戦えばいいのか分からない存在でした。テレビから這い出してくる姿も怖かったのですが、それ以上に、こちらから何をしても通用する気がしないところに怖さがあったように思います。

それが『貞子3D』では鉄パイプや石で反撃できてしまう。貞子が目の前にいることよりも、「貞子って殴れば倒せるのか」という方が気になってしまいました。

極めつけは貞子のエイリアン化

そして極めつけは、終盤に出てくる大量の貞子です。

映画が公開される前からCMなどで貞子が使われていたので、姿を見せること自体は分かるのですが、映画の中では複数の貞子が現れ、しかも人間の幽霊というより『エイリアン』にでも出てきそうな怪物のような姿になっています。

ここまで来ると、もはや井戸から出てくる怨霊というよりクリーチャーです。

しかも刑事の小磯勇吾は簡単に襲われてしまうのに、鮎川茜は鉄パイプや石を使って何体も倒していく。さらに大量に出てきても最後は茜の力で一掃されてしまいます。

怖いというより、「こんなにたくさん出てきていいのか」「しかも倒せるのか」と別のところが気になります。

幽霊は姿が見えないから怖い、何をしてくるのか分からないから怖いという部分があります。ところが、これだけ大量に姿を見せて、しかもこちらから攻撃できると分かれば、どうしても敵キャラクターとして見てしまいます。

貞子をたくさん出せば怖さも何倍かになるというものではないのだろう。

主人公の超能力も都合よく見えてしまう

鮎川茜には超能力のような力があり、作中でも感情が大きく動くと何度かその力が発動します。

これも最初は物語にどう関係してくるのかと思っていたのですが、後半になると少し都合のよい能力に見えてしまいました。

それまでは茜が情緒不安定になると比較的簡単に力が出ていたのに、怪物化した貞子にあれだけ追い回されてもなかなか発動しません。

いや、今こそ使うところではないのかと思ってしまう。

そして最後には大量の貞子を相手にするための力として使われます。

主人公に特殊な能力があること自体は別に悪くありません。ただ、それまで使えていた能力が必要なときだけ使えなくなり、最後には一気に問題を解決する力になると、どうしても物語を進めるための設定に見えてしまいます。

怖がらせるより驚かせる映画になっている

『貞子3D』にはホラーらしい場面もあるのですが、全体を見ると「怖がらせる」というより「驚かせる」ことを優先しているように感じます。

突然大きな音が鳴ったり、画面のこちら側へ何かが飛び出してきたりする場面が多く、暗い場所で何かが起きそうな雰囲気を長く続けるような怖さはあまりありません。

自分が『リング』で怖かったのは、何も起きていない時間でした。テレビが置いてあるだけでも嫌な感じがする。井戸が映っているだけでも何か出てきそうに思える。そういう、何も起きていないのに嫌な感じが続くところに怖さがありました。

『貞子3D』では、その嫌な時間を待つ前に何かが飛び出してくるので、その瞬間には驚いても後まで怖さが残りにくい。

ホラーに慣れていない人なら驚く場面はかなりあると思いますが、自分には恐怖よりも「次は何が飛び出してくるのだろう」という見方になってしまいました。

3Dで見れば印象は違ったのかもしれない

ただし、この映画については一つ考えておかなければならないことがあります。

タイトルが『貞子3D』なのだから、もともと劇場で3Dとして見ることを前提に作られた映画です。

そのため、画面の奥から何かがこちらへ向かってきたり、物が飛び出したり、貞子が画面から出てきたりする演出が多いのでしょう。

自分が見たのは2D版なので、3Dなら観客へ向かって飛び出してくるはずの映像が、普通の画面では少し不自然なカメラアングルに見えてしまうところがあります。

劇場で3Dとして見ていれば、もっとホラーとして楽しめた可能性はあります。

逆に考えると、この作品は『リング』のようなJホラーをそのまま作ろうとしたというより、貞子という有名なキャラクターを使って3D映画を作った作品と考えた方が分かりやすいのかもしれません。

アクション映画として見るなら意外と楽しめる

ここまで書くと完全にダメな映画のようですが、不思議なことに、ホラー映画として見るのをやめると意外と楽しめるところがあります。

貞子が大量に出てきて、主人公が鉄パイプを持って戦い、最後には超能力まで使う。

『リング』の続編のような気持ちで見ると「なぜこうなった」と思いますが、最初から貞子を使ったアクション映画だと思えばツッコミどころが山ほどあり、それを楽しむ映画として見ることもできます。

怖い映画を見たいと思って借りた人にはかなり厳しいと思いますが、貞子がどこまで変わってしまったのかを見たいなら、これはこれで他にはあまりない映画です。

リングシリーズとして考えるから腹が立つのであって、貞子というキャラクターを使った別の映画だと思えば、妙に面白く見えてくるところもあります。

『貞子3D』を見た感想

結局、自分が『貞子3D』を残念に感じたのは、作品そのものが何も面白くないからではなく、貞子から一番怖かった部分を取ってしまったように感じたからです。

姿をほとんど見せず、どこにいるのかも分からず、どうやって逃げればいいのかも分からない。それが『リング』の貞子の怖さだったと思います。

ところが『貞子3D』では何度も姿を見せ、物理的に襲い、最後にはこちらも物理的に反撃できるようになります。さらに大量に出てくるので、貞子を見ることそのものにも慣れてしまう。

一体だけでもどうにもならない存在だったから怖かったのに、大量に出てきて鉄パイプで倒せるようになれば、それはもう別の怖さになってしまうのではないだろうか。

そのため、自分にはホラー映画としてはかなり残念な作品でした。

ただ、貞子が鉄パイプで倒され、怪物のような姿で何体も追いかけてくる映画というのも、そう何本もありません。

怖い貞子を見たいなら『リング』を見た方がいい。しかし、アクションをする貞子を見て「これは何なんだ」とツッコミながら楽しみたいなら、『貞子3D』も悪くないのかもしれません。

見るならホラー映画として身構えるよりも、貞子を使った変わったアクション映画くらいの気持ちで見るのがちょうどいい作品ではないだろうか。