劇場版『ほんとにあった!呪いのビデオ100』感想と考察ぽいレビュー(ネタバレあり)
大学生・鷲巣さんがAirDropで受け取った謎のバスケ映像には、赤い光や祭壇のような不気味なものが映っており、それを見た後から怪異を感じるようになる。ナレーションの中村義洋が、24年前にも同様の映像を見たと語り、過去の投稿者・杉田さんを辿っていくうちに、疱瘡除けの儀式、肝炎で亡くなった和子さん、そしてストーカーだった監督の存在が明らかに。やがてビデオの正体と呪いの正体が判明し、神送りを経て映像が公開されるが、ラストには現実的な恐怖も残される。
【監督】中村義洋
【脚本】中村義洋
【俳優】
中村義洋、男鹿悠太、木勢まりあ、久木香里奈
【公開】2023年
【時間】97分
【国】日本
【ジャンル】ホラー、モキュメンタリー
【点数】4
本作はコロナ禍に撮影されたこともあり、出演者がマスクを着用している姿が印象的な作品。時世に合わせた話題を映画化した感じの作品なので、10年とかしたら懐かしい話題として見ることになるのかなという印象もある。
5 … 人に紹介できる面白さが解る映画
4 … 感性の違いはあるかもしれないが面白い映画
3 … 時間の無駄とは感じなかった映画
2 … 最後まで見ることができないこともある映画
1 … 紹介してきた人を殴りたくな
【感想とストーリーと考察】(ネタバレあり)
大学生の鷲巣さんが投稿したバスケットボール大会の映像から始まる。その映像には赤い光に包まれた不気味な場面や、祭壇のようなものが映り込んでいた。鷲巣さんによれば、この映像はMacのAirDrop機能で送られてきたものだが、送信者は不明。映像を見て以降、「誰かに見られているような感覚」が続いているという。
ナレーションを担当する中村義洋氏は、「この映像を24年前にも見たことがある」と語ります。1999年、高校生の杉田さんから同じ映像が投稿されていたことが判明。当時、その映像は本来の持ち主の知らないうちに『呪いのビデオ』に送られ、後に返却を求められた経緯があった。
スタッフは杉田さんの元を訪ねるべく長野へ向かうが、転居を繰り返していたため追跡が困難に。しかし、鷲巣さんへの聞き込みや定点カメラによる監視により、映像にまつわる怪異の存在が明らかになっていく、リモコンの位置が勝手に変わる、使っていない風呂が濡れている、そして誰かの視線を感じるなどの現象が頻発しているという。
映像内の色合いを調整した結果、赤く染まった画面の奥には「達磨」「神棚」「疱瘡除けの御幣」などが映っており、それが疫病を祓うための儀式の痕跡であると判明する。スタッフにも異変が起こり、赤いモヤに包まれた映像や家の中に現れる人影など、不穏な現象が次々に報告される。
過去に映像を見た中村氏には怪異が起きておらず、「中途半端な映像では厄除けにならないのでは?」との仮説が立てられるなか、そんな中で杉田さんから連絡が入り、実は当時ダビング途中で映像が切れてしまっていたことや、映像視聴後に結核にかかっていたことが明かされる。
撮影中にスタッフがコロナに感染するという事態も発生。コロナ第七波のさなかであったため、撮影は一時中断。後日、杉田さんの母親が入所する施設で、かつてのビデオの持ち主・和子さんについての情報を聞き出す。
和子さんの口からはママさんバスケの選手であり、監督が住職で「鬼のような人物だった」と語られる。調査の結果、他の選手が所持していたビデオには異変はなく、和子さんのビデオだけが祭壇や達磨などが「重ね録り」されていた可能性が浮上。そして和子さんは肝炎で他界していたことが判明する。
やがて監督の本当の姿が明らかになってくる。表向きは神主で優しい人物として知られていたが、実は和子さんに執着するストーカーであり、彼女に向けた“神迎え”の儀式映像を作成していた。映像には赤飯や赤い御幣、赤べこなど、疱瘡に関係するアイテムが確認され、監督自身がミミズクの化粧を施して布団の枕元に座るという異様な姿が記録されていた。
最終的に、映像に映る疱瘡神を鎮めるための「神送り」が行われ、映像の全容が映し出される。
映画のラストでは、快復した鷲巣さんと、彼を支え続けた隣人の三上さんがカップルになったという報告で幕を閉じる。
ただし――。
映像を見た者に不審な出来事が起こるにもかかわらず、「抜き出した画だけなら影響がない」として、いくつかの映像が披露されます。とはいえ最後には「この映像は本当に安全か分からない。視聴は自己責任で」と念押しされるのです。
2時間近く怪異と感染症の恐怖が積み上げられた末に提示される「完全映像」。観客は「あなたはこのリスクを承知で映像を見ますか?」と問いかけられるのですが、その段階で“見ない”という選択は難しくもしかしたら病気にという恐怖を与えてきます。
また作中では、赤い物を身につけていると疱瘡神が寄ってくるという話があります。実際、赤を身に着けていたスタッフが次々とコロナに感染する描写がありますが、赤い衣服を身に着けていても感染しなかった人物が2人います。それが中村義洋氏と、鷲巣さんの隣人・三上さんです。
中村氏は過去に映像を見ていたことから、「一度罹った者は免疫を得る」という疱瘡の性質を反映し、耐性があったと解釈できます。一方の三上さんは映像を見ていないにもかかわらず、赤い服を着ていました。その存在にはどこか不自然な点が残ります。
物語最大の謎は、最初に映像をAirDropで送ってきたのは誰なのかという点です。AirDropは通常、近距離の知人にしか送信できません。作中に登場する人物で可能性があるのは三上さんのみ。彼女は鷲巣さんの大学の先輩であり、鷲巣さんが授業に出ていないことも把握していました。
鷲巣さんが体調を崩した際も、病院の手配を含めて全面的にサポートし、以降は怪異も収まり、恋人関係になったとされています。しかし、彼女の行動にはどこか過剰さもあり、スタッフを監視していたような描写も。ラストシーンでは、演出補の木勢まりあが三上さんを凝視し、真っ赤な服を着た三上さんのアップで物語は締めくくられます。
この結末が暗示するのは、単なる心霊現象ではなく、「人間の恐ろしさ」そのものです。映像に込められた呪いや、過去から続く感染症の恐怖、そして一歩間違えれば現実に存在するストーカー行為。すべてが絡み合い、観る者に強い不安と疑念を残す作品でした。