ドラキュラの傑作ホラー映画『吸血鬼ドラキュラ』

ブラム・ストーカーの小説を原作に、ドラキュラというキャラクターを世界に知らしめた記念碑的な傑作ホラー。

簡単なストーリーまとめ

ドラキュラ退治のため、司書としてトランシルヴァニアのドラキュラ城に潜入したジョナサン・ハーカー。城内を探索中に女吸血鬼に不意を突かれ、首を噛まれてしまう。そこに現れたドラキュラ伯爵は、女吸血鬼と共にジョナサンを気絶させ、彼女を連れ去る。

ベッドで目を覚ましたジョナサンは、地下で伯爵と女吸血鬼の入った石棺を発見する。女吸血鬼にとどめを刺すが、その叫び声で目を覚ました伯爵に殺されてしまう。

ジョナサンからの手紙を受け取っていたヴァン・ヘルシング医師は、ドラキュラ城を訪れる。彼の日記と吸血鬼化したジョナサンを見つけるが、ドラキュラの姿はなかった。

ジョナサンの死を、彼の婚約者ルーシーの兄アーサーに伝えるヘルシング。しかし、ジョナサンへの報復として狙われたルーシーは、すでに吸血されており、ドラキュラを迎え入れる体になっていた。ヘルシングはニンニクの花を飾るよう助言するが、ルーシーが召使いに片付けさせてしまい、彼女は命を落とす。

吸血鬼として蘇ったルーシーは、アーサーの子供を狙う。しかし、ヘルシングによって杭を打ち込まれ、魂が解放される。アーサーはドラキュラを倒すことを決意するが、妻のミナがドラキュラに攫われてしまう。ミナを助けるため、ドラキュラ城へと追いかけるヘルシングは、十字架でドラキュラを追い詰め、朝日によって彼を灰に変えるのだった。


作品情報

  • : イギリス
  • 公開年: 1958年
  • 上映時間: 86分
  • 制作: ハマー・フィルム・プロダクション
  • ジャンル: ホラー
  • 監督: テレンス・フィッシャー
  • 脚本: ジミー・サングスター

キャスト

  • ピーター・カッシング (ヴァン・ヘルシング)
  • クリストファー・リー (ドラキュラ伯爵)

個人的評価: 3/5点

ドラキュラという存在を世に知らしめた、記念碑的な作品として見ると見応えがある。ただ、ストーリーはかなりシンプルにまとめられているので、一度見れば十分だろう。

  • 5点:人に自信を持って勧められる
  • 4点:感性の違いはあれど、面白い
  • 3点:時間を無駄にしたとは思わない
  • 2点:最後まで見るのがつらい
  • 1点:勧めてきた人を殴りたくなる

感想

本作は、映画に登場するドラキュラの原型とも言える存在を確立した作品です。誰もが知っている十字架やニンニク、太陽の光といった弱点は、現代のドラキュラ像とほとんど変わらず、すんなりと受け入れられます。

その一方で、ドラキュラが持つ超人的な力はほとんど描かれていません。アーサーとヘルシングの会話では、霧や動物に変身する能力は否定され、人間と取っ組み合いができる程度の力しか持ち合わせていないように見えます。そのため、劇中では二人が揉み合いながら戦うシーンがほとんど。ブラム・ストーカーの原作にあるような怪力やテレパシーといった超能力的な力はほぼ出てこないため、ヘルシングが城へ向かう途中で立ち寄った村の住民が、何にそこまで恐怖しているのかが謎に感じてしまいます。

もちろん、上映時間や1958年という時代背景、CGのない撮影技術を考えると、原作の描写をすべて再現するのは難しく、意図的に力を省いた可能性も高いでしょう。そう考えると仕方がない部分も多いのかもしれません。

とは言え、現代の視点で見ると、正直なところ恐怖の対象としては物足りなさを感じます。しかし、吸血鬼が認知されていく過程をたどる歴史的遺産として鑑賞すれば、十分に楽しめる作品です。

もし本作を見て「ドラキュラ伯爵って弱いな」と感じた方は、ぜひブラム・ストーカーの原作を読んでみてください。強くて賢いドラキュラ伯爵の魅力を存分に味わうことができます。

弱体化しすぎで悲しくなってくる、とありましたね。たしかに、映画の中でドラキュラが使った力は、噛んだ人間を吸血鬼にする力と、噛んだ相手を魅了する力ぐらい。原作と比べると、かなり物足りなく感じてしまいます。


おまけ

  • 本作は、現在のドラキュラ像を確立した作品の一つです。ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』を原作とし、1931年の『魔人ドラキュラ』のリメイク的な位置づけで制作されました。
  • 主演を務めたピーター・カッシングクリストファー・リーは、この後も22作品で共演し、世界的なスターとなります。
  • 本作の監督、脚本家、スタッフは、前作の『フランケンシュタインの逆襲』と同じメンバーです。実は、フランケンシュタインと吸血鬼には意外なつながりがあります。1816年、スイスの別荘でメアリー・シェリーら5人が集まり、それぞれが怪奇な物語を作る「ディオダティ荘の怪奇談義」が行われました。このとき、メアリー・シェリーによって『フランケンシュタイン』、ジョン・ポリドリによって『吸血鬼』の原型が作られたのです。
  • フランケンシュタインが人造人間として様々な作品に影響を残している一方で、吸血鬼はもともと伝承として存在していたことや、女吸血鬼カーミラ、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』など、様々な原型があったおかげで、今でも新しいヴァンパイア映画やドラマが作られ続けています。

『吸血鬼ドラキュラ』は、今も続くドラキュラ人気を支える上で欠かせない作品の一つです。