ハロウィンにまつわる3話構成のホラーオムニバス
『劇場版ほんとうにあった怖い話2019 冬の特別篇』は、ハロウィンを題材にした3本の短編ホラーを収録したオムニバス形式の映画。
1話目は悪魔召喚を扱い、2話目は“いたずら”をテーマにした家庭内ホラー、3話目ではハロウィンのルーツとされるケルト文化を取り入れた怪異譚となっています。
明示的なつながりは薄いものの、どのエピソードもハロウィンの雰囲気を踏襲しており、テーマ性の一貫性が感じられます。
それぞれに異なる恐怖のアプローチがなされており、じわじわ来る不安感、感情を揺さぶる哀しさ、伝統的な怪談要素などバラエティ豊か。冒頭には「実話をもとにした再現ドラマであり、視聴者の模倣行動による被害には責任を負わない」といった警告テロップが流れ、体験ホラーらしさを演出しています。
ただし全体としてはテレビの心霊特番のような再現ドラマ風の演出であり、劇場作品としての“怖さ”はやや控えめ。ジャンプスケアや特殊効果はほぼなく、ホラーに慣れている人には物足りなく感じられるかもしれません。
各話紹介
『Trick or Treat』
男性がオカルト系ウェブサイトの管理人を呼び、体験談を語る形で物語が始まります。
大学生3人が、ネットで見つけた悪魔召喚の儀式を試すため、郊外の廃屋を訪れる。一番年下のコウイチが先に建物へ入り料理を始めますが、次第に様子がおかしくなっていき……。
儀式が完了する前に怪異が起きる展開は、日本の「百物語」のように、途中でやめることの危険性を想起させます。
『Phantasm』
毎年ハロウィンを楽しみにしていた姪を事故で亡くした夫婦。喪失の中、家の中で誰かのいたずらが始まります。
最初は配偶者の悪ふざけかと思っていたものの、次第に事態はエスカレート。ホラーに慣れた観客の予想を少し外してくる構成が印象的です。
『The Door』
仕事で疲れた女性が、公園での昼食を唯一の楽しみにしていたが、いつも同じ場所から見つめてくる謎の外国人女性が気になり始める。
友人に相談すると、その知人・ノゾミが同じ女性を夢で見たという。やがて自宅の押し入れの奥に不思議な封印を見つけ……。
ケルト文化のモチーフが物語に加わり、独特の雰囲気を生んでいます。
作品情報
- タイトル:Trick or Treat(オムニバス3話構成)
- 国:日本
- 公開年:2019年
- 上映時間:75分
- ジャンル:ホラー
- 監督:鳥居康剛
- 脚本:新津徳也、西野里沙
- 出演:橋本祥平、飯窪春菜、小牧那凪
総評:★★★☆☆(3/5)
夏の深夜に観るにはちょうどよい雰囲気。若手俳優たちの頑張りもあり、内容としても退屈せずに楽しめる作品でした。
派手な恐怖表現は少ないため、インパクトを求める人には物足りないかもしれませんが、ハロウィンをテーマにした小品としては悪くない仕上がりです。
★星評価ガイド
- ★★★★★ … 他人にも胸を張って勧められる作品
- ★★★★☆ … 感性次第では絶賛もあり得る良作
- ★★★☆☆ … 観ても時間の無駄にはならない
- ★★☆☆☆ … 最後まで観るのがしんどいことも
- ★☆☆☆☆ … 勧めてきた人を恨みたくなる