タイトルと雰囲気から、てっきりホラードラマだと思って再生した『この動画は再生できません』。
ところが実際に見てみると、怖い動画を見せるだけの作品ではなく、その動画の中にある不自然なところを見つけて「本当は何が起きていたのか」を考えていくミステリーでした。
最初はかなりホラーらしいので、本当にそういう番組だと思って見てしまうのですが、途中から芸人・かが屋の二人が登場して空気が一変する。この切り替わりがかなり面白く、何も知らずに見た方が楽しめる作品だと思います。
『この動画は再生できません』は怖い?
タイトルだけを見るとかなり怖そうですが、作品全体として考えると、純粋なホラードラマというよりホラーの形を使ったミステリーに近いです。
投稿されてくる動画の部分だけを見ると普通に怖い。廃墟へ行った女子高生や心霊現象が起きた配信など、いかにも「本当にあった恐怖映像」のような作りになっていて、何も知らずに見始めると普通の心霊番組だと思ってしまいます。
ただ、その後に江尻と鬼頭が動画を見直していくと、さっきまで心霊現象だと思っていたものに別の理由が見えてくる。
幽霊が怖いというより、「この映像のどこがおかしいのだろう」と考えながら見る作品なので、一度その仕組みが分かると怖さよりも謎解きの方が面白くなってきます。
それでも完全にホラーを捨てているわけではなく、ときどき本当に嫌な感じのものを混ぜてくる。そのため「結局、この作品では幽霊はいるのか、いないのか」と考えながら見ることになり、この微妙なところが自分にはかなり面白く感じました。
ホラーだと思ったらミステリーだった
第1話を見始めると、最初は女子高生たちの恐怖体験を撮影した動画がかなり長く続きます。
タイトルも『この動画は再生できません』と不穏なので、自分も「ホラーの再現映像なのだろう」と思って見ていました。
ただ、見ていると登場人物の行動や映像のつながりに、なんとなく変なところがあります。
再現映像だから多少おかしいのだろうと思っていたところで女子高生たちが死に、その直後に場面が変わって、突然かが屋の二人が普通に会話を始める。
ここで初めて「そういうドラマだったのか」と分かりました。
かが屋が演じるのは、映像ディレクターの江尻とオカルトライターの鬼頭。二人のところへ送られてきた心霊動画を見ながら、映像の中に残された不自然なところを探し、本当は何が起きていたのかを解き明かしていきます。
最初に怖い映像をそのまま見せて、視聴者にも一度「心霊現象だ」と思わせたあとから答え合わせをするので、自分も江尻たちと一緒に動画をもう一度見直しているような感覚になります。
映像編集の知識で謎を解くのが面白い
このドラマで面白かったのは、超能力や霊能力で謎を解くのではなく、映像そのものを見て答えを出していくところです。
動画のカットが不自然だったり、映っているものの位置がおかしかったり、「なぜここで映像を切ったのか」と考えたりする。
自分も動画を見ているときに「ここは少し変ではないか」と感じることがありますが、それが単なる演出上の都合ではなく、ちゃんと謎を解くための手掛かりになっています。
ホラー映像というのは、何か変なものが映っている場所ばかり見てしまいます。しかし、この作品ではむしろ何も起きていないように見える場所の方が重要だったりする。
一度答えを聞いてから動画を思い返すと、「確かにあそこはおかしかった」となるので、その答え合わせが気持ちいい作品です。
かが屋の二人がいることで重くならない
舞台は基本的にひとつの部屋で、江尻と鬼頭が投稿動画を見ながら話をしています。
これだけなら地味なドラマになりそうですが、かが屋の二人のやり取りがかなり自然です。
適当そうでどこか憎めない鬼頭と、それに振り回される真面目な江尻という関係が、ダメな上司と苦労している部下のようでもあり、妙にリアル。
かなり怖い動画を見た直後なのに、二人はどこか他人事のような感じで話しているので、その温度差も面白い。
ホラーだけをずっと続ければかなり重くなりそうなところを、二人の会話がうまく休憩時間のような役割をしていて、また次の怖い動画を見ることができます。
1話も25分ほどなので、長いドラマを見るつもりで構えなくてもサクッと見られました。
全4話なのが少しもったいない
惜しいと思ったのは、シーズン1が全4話しかないところです。
最初はどういう作品なのか分からずに見ているので、第1話で仕組みが分かり、第2話、第3話と進むころには「次はどんな動画なのだろう」と楽しみになってきます。
ところが、そこで第4話。
ようやく作品の見方が分かってきたところで終わってしまうので、もう少し見たかったと思いました。
ただ、この短さだから同じ展開を繰り返して飽きる前に終わっているとも考えられます。怖い動画を見せて、それを二人が解き明かすという同じ構造を何十話も続ければ、さすがにパターンが読めてしまうでしょう。
4話くらいで終わるからこそ「もっと見たい」と思えるのかもしれません。
テレビ放送と配信版では見え方も少し違う
自分が見た配信版では、怖い動画と江尻たちの謎解きがひとつのエピソードとして続けて見られます。
ところがテレビ神奈川で最初に放送されたときは、怖い動画を見せる側と、その謎を解く側を分けて放送する変わった構成だったようです。
これをテレビで何も知らずに見ていた人は、最初は本当に「深夜に何の番組を流しているんだ」と思ったのではないでしょうか。
配信版ではすぐに答えを見ることができますが、テレビでは次の放送まで考える時間がある。この作品の場合は、その見方もかなり面白そうです。
各話の感想
第1話「死者から来た呪いの動画」
女子高生3人が心霊スポットへ行く映像から始まります。
最初に見たときは普通のホラー映像なのですが、江尻が動画の不自然な部分を指摘していくと、それまで見えていたものの意味が変わってくる。
シリーズがどういう作品なのかを説明する第1話としてかなりよくできていて、自分もここで一気に引き込まれました。
第2話「消えた配信者」
ホラー系の配信者が撮影した動画から始まる話。
いかにも心霊現象らしい出来事が起きるのですが、それを機械のトラブルなど現実的な理由で一つずつ消していく。
それなら全部説明できたのかと思ったところに、どうしても説明できないものが残る。
この作品は何でも「幽霊ではありません」で終わらせるわけではなく、その先に少しだけ嫌なものを残すところがうまいと思います。
第3話「事故物件」
事故物件で撮影された心霊動画。
かなり分かりやすく幽霊が映っているので、逆に江尻はヤラセではないかと疑います。
映像のカットや編集そのものから真相を考えていくので、この作品の「動画を見るドラマ」という特徴が一番分かりやすい回かもしれません。
謎が解けて終わりかと思ったあとに届くメールも嫌な感じが残り、ミステリーだけできれいに終わらないところがよかったです。
第4話「呪われた社内ビデオ」
会社の新卒向けPR動画に隠された違和感を見つけていく話です。
会社紹介動画というだけでも妙に退屈そうなのですが、本当にそれらしい映像が長く続くので、別の意味で眠くなります。
ところが、その退屈な映像の中にもちゃんと意味が隠されている。
この回まで見ていると、こちらも普通に動画を見ることができなくなっていて、「今の映像は何かおかしくなかったか」と探し始めてしまいます。
そして最後には、それまでミステリー寄りだった作品を一気にホラーへ戻す仕掛けが待っています。
鬼頭はなぜ死亡したのか【ここからネタバレ】
最終話で一番驚いたのは、投稿動画の謎ではなく鬼頭の方でした。
それまで江尻の横で普通に話し、中華の出前にも当たり前のように参加しているので、自分もまったく疑っていませんでした。
ところが最後になって、鬼頭はすでに死亡していたことが分かります。
そう考えると、それまで何気なく見ていた二人の会話や中華の出前にも別の意味が出てくる。投稿動画では心霊現象らしいものを次々と現実的に説明してきた作品なのに、最後の最後で一番身近なところに本物の幽霊がいたことになります。
ただし、シーズン1だけを見ても「鬼頭はなぜ死亡したのか」という理由までは分かりません。
誰が、なぜ、どういう経緯で鬼頭が死ぬことになったのか。その答えをここで全部説明せず、「鬼頭は死んでいた」という事実だけを見せて終わるので、当然その先が気になります。
最初は投稿された怖い動画の謎を解くだけのドラマだと思っていたのに、最後には江尻と鬼頭自身がひとつの大きな謎になってしまう。
ここまで見てしまうと、第2期も見ないわけにはいかないでしょう。
点数:4
- 5 … 人に紹介できる面白さ
- 4 … 感性の違いはあるかもしれないが面白い
- 3 … 時間の無駄ではない
- 2 … 最後まで見ることができないこともある
- 1 … 紹介してきた人を殴りたくなる
『この動画は再生できません』を見た感想
『この動画は再生できません』は、怖い作品を見ようと思って再生した自分にとっては少し予想と違うドラマでした。
ただ、その予想を外されたことが悪いのではなく、むしろそこが一番面白かった。
最初は本当にホラー映像を見ているつもりだったのに、途中から映像の違和感を探すミステリーになり、その謎が解けると今度は「次の動画では何が隠されているのだろう」と自分でも探し始める。
そして、散々「これは心霊現象ではない」と謎を解いてきた最後に、本物の心霊現象を二人のすぐそばへ置いて終わる。
ホラーとミステリーを混ぜた作品は珍しくありませんが、怖い動画そのものを謎解きの問題として使う作品はあまり見たことがなく、25分という短さも含めてかなり見やすいドラマでした。
怖さだけを求めると少し違うかもしれません。しかし、怖い映像を見ながら「本当は何が起きているのだろう」と考えるのが好きな人なら、かなり楽しめる作品ではないでしょうか。
できれば最初の1話だけでも、何も調べずに見てほしい作品です。

