ドラキュラ映画の原点はどれか、と聞かれたとき、多くの映画ファンが思い浮かべる一本がこの作品です。

1958年にハマー・フィルムが制作した本作『吸血鬼ドラキュラ』は、ブラム・ストーカーの原作をもとに、現代まで続くドラキュラ像を決定づけた記念碑的なホラー映画です。

今観るとシンプルすぎる部分もありますが、「ドラキュラ映画の始まり」を知るという意味では、今でも十分に楽しめる一本です。

映画『吸血鬼ドラキュラ』はどんな作品か(作品概要)

ブラム・ストーカーの小説を原作に制作された、ドラキュラ伯爵を世界的なキャラクターとして定着させたハマー・フィルム版の代表作です。

  • タイトル:吸血鬼ドラキュラ
  • 国:イギリス
  • 公開年:1958年
  • 上映時間:86分
  • 制作:ハマー・フィルム・プロダクション
  • ジャンル:ホラー
  • 監督:テレンス・フィッシャー
  • 脚本:ジミー・サングスター

主演は、後に怪奇映画の象徴となるピーター・カッシング(ヴァン・ヘルシング)と、クリストファー・リー(ドラキュラ伯爵)。このコンビは以後も数多くの作品で共演することになります。

あらすじ(ネタバレ軽め)

ドラキュラ退治のため、司書としてトランシルヴァニアのドラキュラ城に潜入したジョナサン・ハーカー。しかし城内で女吸血鬼に襲われ、ドラキュラ伯爵に捕らえられてしまいます。

彼の死後、手紙を頼りに城を訪れたヴァン・ヘルシングは、吸血鬼となったジョナサンを発見。しかしドラキュラはすでに姿を消していました。

一方、ジョナサンの婚約者ルーシーはドラキュラの標的となり、吸血鬼として蘇ってしまいます。彼女を救えなかったヘルシングとアーサーは、ドラキュラ打倒を決意しますが、次の標的はアーサーの妻ミナでした。

ヘルシングは彼女を救うためドラキュラ城へ向かい、最後は朝日の力によってドラキュラを滅ぼすことになります。

 

見どころ・感想

本作は、現代のドラキュラ像の基礎を作った作品と言えます。

十字架、ニンニク、太陽光といった弱点など、現在の吸血鬼作品でも当たり前のように使われる設定がすでに揃っており、違和感なく観ることができます。

特にクリストファー・リー演じるドラキュラ伯爵の存在感は強烈で、台詞が少ないにもかかわらず、登場するだけで空気が張り詰めるような迫力があります。

また、ピーター・カッシング演じるヘルシングも非常に行動的で、学者というよりアクションヒーローに近い印象すら受けます。この二人の対決構図が、本作最大の見どころでしょう。

気になった点・ツッコミどころ

一方で、現代の視点で観ると物足りなさも感じます。

ドラキュラは霧や動物へ変身することもなく、超人的な力もほとんど描かれません。そのため、戦闘はほぼ取っ組み合いになり、「思ったより普通に戦えるな」と感じてしまう場面もあります。

原作では怪力や精神支配など圧倒的な存在として描かれているため、村人たちがそこまで恐怖する理由が少し伝わりにくい部分もあります。

もちろん、1958年当時の撮影技術や上映時間を考えれば、すべてを再現するのは難しかったはずで、あえて描写を絞った可能性もあります。 とはいえ、「ドラキュラ伯爵、思ったより弱くない?」と感じる人は少なくないでしょう。

総評(観るべき人)

純粋なホラーとして観ると、現代の作品に比べて恐怖表現は控えめで、物足りなさを感じるかもしれません。 しかし、「ドラキュラ映画の歴史的出発点」を確認する作品として観るなら十分楽しめます。

ホラー映画の古典を押さえておきたい人、ハマー・フィルム作品が好きな人、ドラキュラ像の変遷に興味がある人には特におすすめです。

もし本作を観て「ドラキュラ伯爵って意外と普通だな」と思った人は、ぜひ原作小説も読んでみてください。より強大で知的なドラキュラ伯爵の魅力を味わえます。

点数:3 / 5

  • 5点:人に自信を持って勧められる
  • 4点:感性の違いはあれど面白い
  • 3点:時間を無駄にしたとは思わない
  • 2点:最後まで見るのがつらい
  • 1点:勧めてきた人を殴りたくなる

最後に(小ネタ)

本作は、1931年の『魔人ドラキュラ』を下敷きにしたリメイク的な立ち位置でもあり、ハマー・フィルム怪奇映画路線を決定づけた一本でもあります。

主演のピーター・カッシングとクリストファー・リーは、その後も多数の怪奇映画で共演し、世界的スターとなりました。

さらに、『フランケンシュタイン』と吸血鬼作品には意外な共通点があります。1816年、スイスのディオダティ荘で行われた怪奇談義から、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』と、ポリドリの『吸血鬼』が誕生しました。

こうした流れを経て、現在でもヴァンパイア作品が作られ続けていることを思うと、本作が持つ歴史的価値の大きさを改めて感じます。

『吸血鬼ドラキュラ』は、今も続くドラキュラ人気を支える上で欠かせない一本と言えるでしょう。