BS朝日『百年名家~築100年の家を訪ねる旅~』は、住友林業が提供する「名家の住まい」を訪ねる建築番組です。
八嶋智人さん、牧瀬里穂さん、そして建築の解説者と一緒に、約55分で“1軒を深掘り”していく構成。
外観だけで終わらず、素材・工法・暮らしの導線まで追ってくれるのが、この番組の気持ちいいところです。
2018年に見た回:内容まとめ
自分用の記録として、2018年に見た回をざっくり整理します。
- 【東京都】東京タワーを造った男の邸宅「旧内藤多仲邸」
- 【東京都】新選組ゆかりの「本間家住宅」
- 【東京都】旧前田家本邸 洋館
- 【神奈川県】小田原文学館と旧松本剛吉邸宅
- 【茨城県】荒川家住宅(荒七酒屋)
【東京】東洋一と謳われた洋館「旧前田家本邸 洋館」(駒場)
【建物】旧前田家本邸 洋館
【建築年】1929年(昭和4年)
【分類】国指定重要文化財
【場所】東京都駒場
【解説者】
小山工業高等専門学校 名誉教授・河東義之さん
【銘木メモ】
大食堂で見つけたチーク材の壁パネル
番組は旧前田家本邸の和館前からスタート。すぐ隣にある洋館が今回の主役で、3年かけて復元された建物だそうです。
「昔は東洋一と言われた」と聞くと誇張にも思えるのに、内部に入ると納得してしまう。
天井の高さ、柱の迫力、細部の意匠の量が、もう“住宅”の域をはみ出している。
特に印象に残ったのは、窓の仕掛け。
窓枠の中にもう一枚窓が入るような構造で、いわば昔の断熱対策(ペアガラス的な発想)。この「当時の最善を詰めてる感じ」が、めちゃくちゃ刺さりました。自分の部屋に欲しい。
シャンデリアが凄いのは当然として、その“上”の天井意匠まで作り込んでいるのが怖い。
壁紙・階段・天井…全部が過剰なのに、統一感があって崩れない。見れば見るほど「これが東洋一か…」になる回でした。
【東京】塔博士・内藤多仲の邸宅「旧内藤多仲邸」(早稲田)
東京タワー、通天閣、名古屋テレビ塔、さっぽろテレビ塔など、鉄骨構造の電波塔を数多く手がけた“塔博士”こと内藤多仲。
その邸宅が「旧内藤多仲邸」です。
【放送日】2018年11月25日
【公開】非公開(整理がついたら公開を目指すという流れ)
【場所】早稲田大学の近く
【解説者】
早稲田大学 教授・山田眞さん/准教授・小岩正樹さん
この回は「防火」と「合理性」が建物の軸になっているのが面白い。
外観は落ち着いているのに、内部は想像以上にモダンで、保存状態も丁寧。
個人的に一番ヤバいと思ったのが、金属に描かれた木目。
言われなければ木にしか見えないし、映像で拡大しても違和感がない。職人の技が強すぎて、逆に言葉が出ませんでした。
和洋折衷の間取り、建具の工夫(ガラスが収納される枠など)、二重扉の中にモルタルやコンクリートを詰める徹底した防火設計。
「火事に強い家を、本気で作るとこうなる」の教材みたいな回でした。
外からは想像しにくいのに、中はちゃんと美しい。
“理屈で強くして、見た目でも勝つ”という、建築の気持ちよさが詰まっています。
※DOCOMOMO Japan
モダン・ムーブメントに関わる建物と環境形成の記録調査・保存のための国際組織。
【東京】新選組ゆかりの「本間家住宅」
【放送日】2018年5月頃の回
【公開】一般公開なし
【場所】東京都 国立市
【解説者】
ものつくり大学 名誉教授・白井裕泰さん
甲州街道沿いに建つ、江戸中期から約300年近い歳月を重ねた名主の家。
幕末には近藤勇や土方歳三が訪れたこともあるという、“歴史の通り道にある家”です。
番組は谷保天満宮からスタート。天満宮と本間家のつながりがあり、邸宅は現在市に寄付されているとのこと。
この回の主役は「時間の層」。
改築の跡、かつて壁だった痕跡、押板の跡…“昔の家の記憶”を辿っていく感じが良かった。
ただ、老朽化で傾きも出ていて、いずれ解体修理される予定。
そして難しいのが、「当初の姿に戻すのか」「幕末の改築後に合わせるのか」。
古い建物って、保存するほど“どの時代を残すか”の選択が重くなるんだな…と考えさせられました。
【神奈川】小田原文学館と旧松本剛吉邸宅
【場所】神奈川県 小田原市
【解説者】東海大学 教授・小沢朝江さん
【公開】
■小田原文学館:1階・2階は幕末志士の史料館/別邸は北原白秋関連
■旧松本剛吉邸宅:木曜〜土曜に庭園と茶室「雨香亭」公開(11:00〜15:00)
小田原文学館は、田中光顕の別邸だった場所で、小田原では数少ない洋館が見られるのがまず強い。
細部で印象に残ったのは、障子ではなく“小紋ガラス”が使われているところ。
あと、2階にトイレがあるのも、時代を考えると地味にすごい。
もう一つの旧松本剛吉邸宅は、現在も人が住んでいる建物。
ガラスが大きく、庭の緑が室内に入ってくるような設計で、雰囲気がとても良い。
手水鉢まわりの見せ方(壁と岩の融合)や、床下の丁寧な仕事など、和の手入れの“密度”が高い。
「かつて水が流れていた」痕跡が残っているのも、想像が膨らむポイントでした。
【茨城】荒川家住宅(荒七酒屋)
【住所】茨城県下館(現在の筑西市)
下館では「蔵をできるだけ残して街に溶け込ませよう」という市民活動もあり、建物が“点”ではなく“景色”として残っているのが良い。
荒川家住宅(荒七酒屋)は国登録有形文化財。
外観は洋風なのに、屋根は和風で帝冠様式。個人宅でこのバランスはかなり珍しいと思います。
空気の入れ替えを重視した造り、コテ絵の見事さ、そして「取り外しできる造作」が多いのも面白い。
ただ、見た目重視のために雨戸が“つけ外し式”になっていて、手間がかかる…という話も、住まいとしてのリアルがあって印象に残りました。
まとめ:この番組が強い理由
『百年名家』は、ただ「古い家=すごい」で終わらせず、
- その時代の最先端(断熱・防火・素材)
- 暮らしの都合(動線・改築の理由)
- 残す難しさ(どの時代を復元するか)
まで映像で見せてくれるのが良い。
建築が好きじゃなくても、「技術」と「生活」と「歴史」が一本の線でつながっていく感じがあって、見終わった後に妙に満足感が残る番組でした。

