NHK『サイエンスZERO』2018年の記録と感想|わずか1分で満充電?夢の全固体電池

「電池が変わると、未来が一気に現実になる」。
2018年の『サイエンスZERO』で取り上げられたのが、“夢の全固体電池”でした。

番組の入口が分かりやすい。
舞台は筑波で行われる電気自動車レース。ここで電池の限界がハッキリ出ます。

  • 予選と本戦の間に、充電のため5時間以上のインターバルが必要になりがち
  • リチウムイオン電池は熱問題があり、熱を持つと危険(だから冷ます必要が出る)
  • 熱対策のために速度を落とす=レースとしても不利

つまり、EVが本気で普及するには、「安全」と「速い充電」と「大容量」がセットで要る。
その答えとして紹介されたのが全固体電池です。


全固体電池が“夢”と言われる3つの理由

番組ではメリットが、かなりはっきり整理されていました。

  • ① 熱に強く安全
  • ② 容量が約3倍を狙える
  • ③ 充電時間が1/3

なぜこんな話になるのか。ポイントは、電池内部の「電解質」が液体か固体かです。


そもそもリチウムイオン電池は何が弱いのか

一般的なリチウムイオン電池は、電解質が液体です。
充電・放電はざっくり言うと、リチウムイオンが「マイナス極⇔プラス極」を行ったり来たりする仕組み。

ただし、液体ゆえの弱点がある。

  • 液体を漏らさないために構造(カバー等)が大きく・重くなりやすい
  • 熱が加わると化学反応が起きやすく、トラブルリスクが上がる
  • 熱や副反応が進むと、リチウムイオンの移動が邪魔されて劣化や性能低下につながる

ここを固体にできたら、話が変わる。
それが全固体電池の発想です。


全固体電池:なぜ固体にすると強いのか

全固体電池は、電解質を含む材料がすべて固体
液体がないからこそ、次のメリットが出る。

  • 熱に強くなり、安全性が上がる
  • リチウムイオン以外が動きにくく、劣化要因を減らせる
  • 構造設計の自由度が上がり、高容量化が見えてくる

ただし、理屈は簡単でも、開発は地獄。
番組でも「めどが立つまでに30年以上」という話が出てきました。


開発を前に進めた“3つのブレークスルー”

① 固体電解質の発見(2011年)

まずは「イオンがよく動く固体」が必要。
そこで登場したのが、固体電解質としての材料発見です。

2011年:Li10GeP2S12
(リチウム、ゲルマニウム、リン、硫黄)

結晶構造の中に、リチウムイオンが通る“通路”がある。
固体なのにイオンが動ける、ここが大きい。

② ゲルマニウム問題→代替材料へ(2016年)

ただしゲルマニウムは貴重で高価。
「実用化するなら別の材料に置き換えたい」という壁が出ます。

2016年:Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3
(リチウム、シリコン、リン、硫黄、塩素)

ゲルマニウムを使わずに性能を狙える方向が見えた。
ここで一気に現実味が出る。

③ 界面(インターフェース)問題の解決

最後の壁が、性能を落とす界面
固体と固体を接触させたとき、そこで抵抗や反応が出ると性能が落ちる。
この“界面の問題”をどう処理するかが重要で、ここが解決に近づいたことで実用化が見えてきた、という流れでした。

番組内では「2020年すぎには実用化したい」という目標も語られていて、当時の熱量が伝わります。


感想:結局、EVの未来は“電池の地味な壁”で決まる

見ていて思ったのは、EVの未来って派手なデザインや自動運転よりも、電池の地味な壁に全部つながっているということ。

  • 安全(熱)
  • 航続距離(容量)
  • 利便性(充電速度)

この3点をまとめて押し上げる可能性があるから、全固体電池は「夢」と呼ばれる。
そしてその夢は、材料探しと界面の攻略という、地道な積み上げの上にある。

派手さはないのに、見終わった後に一番ワクワクが残る回でした。