1人の女性を父親として、恋人として迎えにいくロードムービー、サムの父親で元軍人のトム、恋人である弁護士のウィル、何が起きたかはわからないが電波が通じなくなり、連絡の取れなくなったサムを助けに2人がシカゴからシアトルへ車で旅をする映画

弁護士であるウィルはこの旅の中で起きるトラブルを話し合いでどうにか解決しようとするが、混乱極めるアメリカではそんな理性のある解決法は通用せず、ウィルが否定するトムの暴力的な解決だけが物語を推し進めていく。秩序を失ったアメリカでウィルの価値観が変わっていくことが映画のラストで描かれている。

電話の通じなくなり混乱するアメリカの謎などは重要ではなく、トムとウィルの師弟としての関係性と価値の変化を楽しむ映画。ラストで世界の危機がしっかりと描かれていないが、作品としては混乱した世界の始まりのプロローグにみえる。


【あらすじ】

弁護士のウィルはサムとの結婚を認めてもらうために彼女の両親がいるシカゴへと向かう。父親のトムはウィルの事を快く思わない返事をすることにウィルも反発してしまう。

サムの両親に結婚の事を伝えられなかったウィルはシアトルに帰ろうと空港に向かうなかサム連絡を入れている途中で彼女の電話が切れてしまう。急いで空港に向かうが飛行機は運休になっているためにトムの家へと戻る。

トムがシアトルにいるサムのところに行くと言いい、ウィルとトムがサムを助けにシアトルを目指してアメリカ横断することになる。

【タイトル】『すべての終わり』(原題:How It Ends)
【監督】デヴィッド・M・ローゼンタール
【脚本】ブルックス・マクラーレン
【公開】2018年
【時間】113分
【国】アメリカ
【配給】Netflix
【ジャンル】アクション、ロードムービー

【映画点数】4

5 … 人に紹介できる面白さが解る映画
4 … 感性の違いはあるかもしれないが面白い映画
3 … 時間の無駄ではない映画
2 … 最後まで見ることができないこともある映画
1 … 紹介してきた人を殴りたくなる

【感想】

映画としては3,4日の出来事ながらもロードムービーとして作品を捉えています。ウィキペディアにはアクション映画となっているが、突然のできごとで連絡が取れなくなったサムの元へ父親とその恋人が向かう男同士の旅、普通に考えるならシアトルまでそこまで困らないかと思うのだが、そこはアメリカで混乱が起こり情報が錯綜したその日からトラブルが2人についてまわる。

アクション映画というよりはシアトルまでのロードムービーとして見える。

金をとられそうになるわ、強盗とカーチェイスをするは途中で車の整備工のリッキーと一緒に旅をする。そして火事になっている山の中を抜けている最中にまたも強盗にであい、ガソリンを奪われる。

本当にたった数日で無法地帯と化すアメリカ、日本人からしてみればそんなことがあり得るのかと思うかもしれないが、アメリカのアニメで町に電気が付いているときは皆が紳士にふるまうのに停電になると暴徒となる作品がある。

もちろん過剰な演出ではあるが、ハリケーンなどでスーパーから凄い勢いで盗んでいく人々のことを考えると情報が入らなくなった瞬間から暴徒となる可能性は十分にあるのではないだろうか。

そんな自由な国アメリカ、作中には町全体が人の立ち入りを拒否するといった場所も出てくる。アメリカ人の国に頼るのではなく個人や街といった集団で自分たちを自衛するといったことが2人の旅の中で描かれる。


『すべての終わり』をみているとアメリカの考え方が見えてくる。もちろん2人の旅を盛り上げるために大げさに演出されているのだろう。

元軍人のトムと弁護士であるウィルどちらの能力も物語の中で活躍する。作品を通してウィルの成長が大きい、トムから混乱の中、甘い考えでは生きていくことも困難であることを身をもって感じることで成長と価値観の変化がラストへと繋がっていく。


それにしても旅は強盗に何度もあったり、警察を装った存在に銃で撃たれたりといろいろなことが起きすぎである。

少し走れば銃に撃たれ、少し走ればカーチェイスをする羽目になり橋を渡ろうとすればバイクで追われる。マッドマックスの世界もびっくりなほど襲われる。

これだけ危機にあえば嫌でも助け合わないとサムに会いに行くことも出来ないほどにヒャッハーしている人たちが多すぎる。アメリカらしいといえばそれまでだが、世界の変化で人々のたがが外れて価値観の変化した適応した人たちが襲ってくる。

そのおかげとトムとウィルの心の距離が近づいていく。サムを助けに行きたいという2人の同じ気持ちと助け合わないとシアトルまで行けそうにないほどに襲われる2人。

最初は会話すらせずに車を走らせている。途中で同行する子供のリッキーはピエロ役として場の空気を換える役目を果たしている。そのリッキーも抜けると、二人の関係に空いた隙間を埋めるようにポツリポツリと話しだすことで二人の関係が改善されている。


突然のわけのわからない出来事、混乱するアメリカ、大切なサムを助けに行く2人、たった数日の出来事のなかに数か月分の物語を詰め込んだのが物語を見たと感じさせる。

映画を見てもなぜ世界の危機のようなことになったのか、何が起こっているのかわからない。それでも2人の男が1人の女性を助けるために1台の車で混乱するアメリカを横断するロードムービーとしてのとトラブルと世界の危機にたいして価値観の変化は見る価値がある。