不死身の殺人鬼ジェイソンが、ついに宇宙へ。
映画『ジェイソンX』は、2455年の宇宙船を舞台に、復活したジェイソンが学生や軍人たちを追い詰めるSFスプラッター映画です。
奇抜な設定でありながら、シリーズらしい王道の面白さが詰まっています。
『ジェイソンX』のあらすじ
近未来の2010年。クリスタル湖の地下にある研究施設では、200人以上を殺害したとされる連続殺人鬼ジェイソン・ボーヒーズが捕らえられていました。
銃撃や薬物など、どのような方法を使っても完全には死なないジェイソンに対し、研究所は処刑を断念します。最後の手段として選ばれたのは、彼を超低温室に閉じ込め、冷凍状態のまま永久に封印しようとする。
しかし、ジェイソンの驚異的な再生能力を研究したい軍の上層部は、冷凍計画を中止させようとする。その混乱のなかでジェイソンは拘束具から脱出し、研究所の職員や警備兵を次々と殺害していく。
一人生き残った女性科学者ローワンは、ジェイソンを超低温室へ誘い込み、冷凍装置を作動させ、ジェイソンを凍結することには成功したものの、ジェイソンの一撃によってローワンも重傷を負い、冷却ガスを浴びて一緒に冷凍することとなる。
それから445年後の2455年。
かつて人類が暮らしていた地球は、長年の汚染によって人が住めない惑星となり、すでに見捨てられていました。考古学者のロウ教授と学生たちは、旧地球の遺跡を調査するため、廃墟となったクリスタル湖の研究施設へ降り立つ。
そこで調査隊が発見したのは、冷凍状態のまま残されていたローワンと、奇妙なホッケーマスクをかぶった巨大な男。
学生たちは二人を貴重な発見物として宇宙船へ運び込み、未来の医療技術によってローワンを蘇生され、意識を取り戻したローワンは、もう一人の冷凍体がジェイソンであることを知り、今すぐ船外へ捨てるよう警告したのだが…
しかし、時すでに遅し。
冷凍状態から目覚めたジェイソンは、400年以上の時を経ても何ひとつ変わることなく、宇宙船の中で新たな殺戮を始めるだった。
逃げ場のない宇宙空間を舞台に、学生や軍人たちと、不死身の殺人鬼ジェイソンによる死の鬼ごっこが始まる。
『ジェイソンX』の評価
| 監督 | ジェームズ・アイザック |
|---|---|
| 脚本 | トッド・ファーマー |
| 公開 | 2002年9月13日 |
| 上映時間 | 93分 |
キャッチコピーに自由を感じる
不死身のジェイソンが、ついに宇宙へ。
ジェイソンが宇宙へ行く。
話だけを聞くと、シリーズも行き詰まり、とうとう奇をてらった設定に走った作品のように思えるかもしれません。
しかし、実際に見てみると、落ち目になっていたシリーズの息を吹き返そうとする勢いが感じられます。
たい焼きに例えるなら、頭から尻尾までジェイソンがびっしり詰まっている。
舞台は宇宙ですが、内容は意外なほど王道のジェイソン映画です。
2010年でも2455年でも、ジェイソンの基本スタイルは変わりません。軍人を相手にすれば、圧倒的な力で正面からボッコボコにする。一般人を狙うときは、逃げ道を奪いながら、じわじわと追い詰めていきます。
場所が宇宙船になっても、絶対無敵の殺人鬼として無双する姿は健在です。
未来の設定をきちんと利用している
登場人物たちは、ジェイソンからただ逃げ回るだけではありません。
未来だからこそ使える技術を利用し、VR空間にジェイソンを閉じ込めようとするなど、2455年という設定を生かした反撃も試みます。
スプラッター映画だからといって、登場人物がただ順番に殺されていくだけではありません。未来の技術を使ってジェイソンに対抗しようとするところに、作品なりの頑張りが感じられます。
もちろん、本格的なSF映画として細かな設定などは考えてはいけません。
あくまで『ジェイソン』シリーズであり、未来や宇宙船は、ジェイソンを暴れさせるための新しい舞台です。そのくらいのハードルで見たほうが楽しめる。
SFなのだから設定を大切にしろ、と言い始めたら、2455年の軍人たちが服装こそ未来的なのに、やっていることは2010年とそれほど変わらない点まで気になってしまいます。
オープニングからジェイソン無双
物語の冒頭では、すでにジェイソンが軍の施設に捕らえられています。
当初は冷凍保存される予定でしたが、軍の上層部は、ジェイソンの不死身ともいえる再生能力を研究したいと考えます。そこで別の施設へ輸送しようとするのですが、やはり逃げられてしまいました。
あっという間に職員たちは殺され、ローワンとジェイソンの鬼ごっこが始まります。
この場面では、光と暗闇の使い方がうまい。
ジェイソンが階段を下りてくる姿は、ゆっくりとしていて、ほとんど音がありません。まるで幽鬼のように階段を下り、一段進むごとに暗闇の中へ溶け込んでいきます。
一方、ジェイソンから逃げるローワンも階段を下りていきます。
こちらは離れた位置から撮影されているため、暗い階段の中で彼女の姿が小さく見えます。画面の右側からは強い光が差し込んでおり、暗闇の中に逃げ道が示されているように見えました。
その光は、ジェイソンを止められる場所から伸びる希望のようでもあります。
実際にローワンは階段を下りたあと、その光が差す方向へ進んでいきます。彼女が何を目指して逃げているのか、映像だけでもわかるように演出されています。
ジェイソンがどこから来るのかわからない
この鬼ごっこの見せ方も面白いところです。
ローワンは通路から部屋へ移動しながら逃げています。一方のジェイソンは、なぜかパイプが張り巡らされた、施設の裏側のような場所を歩いています。
二人が同じ施設内を移動しているはずなのに、ジェイソンがどこにいるのか、いつローワンの前に現れるのかがわかりません。
そのため、見ている側は常に緊張させられます。
ジェイソンはすでにローワンの居場所を把握しており、すぐには襲わず、狩りを楽しむように追い詰めているのではないか。
そんな錯覚まで覚えてしまいます。
ところでジェイソンさん。
次々に新しい武器を使っていますけど、それも新しい能力ですか?
445年後の地球
オープニングが終わると、謎の集団が蜘蛛の巣だらけの廃墟へ入り、階段をゆっくりと下りていく場面へ移ります。
ここでも、光のある上階から暗闇へ下りていく構図が使われています。
明るい場所から闇の中へ進むことで、彼らが恐怖の存在へ近づいていることが視覚的に伝わってきます。
建物には、必要以上と思えるほど大量の蜘蛛の巣が張られています。さらに、登場人物たちの会話でも、ここが長いあいだ放置されていたことが繰り返し語られます。
それによって、ジェイソンが氷漬けになってから途方もない時間が流れたことを、観客へわかりやすく伝えています。
未来の世界をどのように表現しているのか
2455年の世界は、映画『エイリアン』のような宇宙船での生活を思わせます。
地球はすでに人間が住めない場所となっており、人類は新しい土地へ移住しています。地球そのものを放棄しなければならないほど長い時間が流れたことで、現代との違いを表現しています。
少し変わっているのが、治療の場面です。
私たちが想像するような大型の医療機械ではなく、劇中で「虫」と呼ばれる小さなナノマシンのような存在が、傷ついた体を修復していきます。
現在の医療技術やナノマシン研究が発展した先に、このような治療法が生まれる可能性もあるのではないか。
そう思わせる未来表現になっています。
さらに、この「虫」の存在が、物語の後半につながる伏線として使われているところもよかったです。
400年以上たっても、人間は変わらない
とはいえ、未来になろうが、宇宙へ行こうが、400年以上たとうが、男と女のやることは変わりません。
ホラー映画ではおなじみの展開を始める二人の前に、真面目そうな金髪の女性が現れます。
しかし、金髪女性の運命は、頭が良くても悪くても変わらないらしい。
遊びほうけている男女と、金髪女性が大好きなジェイソンの餌食になってしまいます。
合掌。
ホラー映画なのに。
軍人たちはジェイソンの強さを見せるためにいる
宇宙船には学生だけでなく、武装した軍人たちも乗っています。
ただし、この軍人たちはホラー要素だけを考えれば、それほど必要な存在ではありません。
では、なぜいるのか。
ジェイソンに無双されるためです。
武器を持った軍人たちが、ジェイソンによって次々と片づけられていきます。それによってジェイソンの圧倒的な強さが示され、残された学生たちの恐怖も一気に高まります。
軍人たちは勇敢に戦いますが、あっという間に全滅してしまいます。
ジェイソンの強さを証明するためだけに配置された、悲しき存在です。
ジェイソン先生はリア充に厳しい
「生き残る可能性が12%だから、キスをすれば53%になる。最後までやれば100%だ」
そんな理屈を持ち出して、あれなことを始めようとする男女まで登場します。
このあたりは、実にスプラッター映画らしい。
そして、そうした男女を見逃さないのがジェイソン先生です。
ジェイソン先生、リア充キラーすぎませんか。
まとめ|宇宙へ行ってもジェイソンはジェイソン
『ジェイソンX』は、ジェイソンを宇宙へ連れていくという思い切った作品です。しかし、奇抜な設定だけで勝負しているわけではなく、シリーズらしい追跡劇、残酷描写、ジェイソン無双をしっかりと見せてくれます。
未来の医療技術やVR空間など、2455年だからこそできる展開もあり、宇宙という舞台を完全に飾りだけにはしていません。
本格的なSF映画を期待すると物足りないかもしれませんが、未来の宇宙船を舞台にしたジェイソン映画として見れば、かなり楽しめる作品です。
舞台が地球から宇宙へ変わっても、ジェイソンがやることは変わらない。
そして、それでいいのです。





